「ユニコード」で予期せぬ目に遭った話
自分の知らないCJK Ideographのバリエーションがまだあったことに戦慄している pic.twitter.com/kUlyRLDDTM
— moriyoshit (@moriyoshit) March 9, 2017
などというツイートをしたところ、思ったより反響があったのでまとめておく。
上記ではあいまいに「バリエーション」などと書いたが、Unicodeとそれを扱う環境においては、バリエーションと一口に言っても次のような状況がある。
- 意味論的に等価な異なる字形の集合
- 同じ字形で異なるコードポイントの集合
aは結構なじみ深いと思う。
a-1. 異なるコードポイントにそれぞれ異なる字形が割り当てられているもの
例:
- 「東」(U+6771) ⇔「东」(U+4E1C)
- 「斉」(U+6589) ⇔「齊」(U+9F4A)
- 「高」(U+9AD8) ⇔「髙」(U+9AD9)
a-2. 同じコードポイントで、フォントによって字形が異なるもの
例:
- 「」(MS MinchoのU+9AA8) ⇔「」 (SimSunのU+9AA8)
- 「」(EmojiOneのU+1F600) ⇔「」 (Noto Color EmojiのU+1F600)
a-3. 同じコードポイントで、異体字セレクタなどによって字形が特定されるもの
例:
- 「」(U+260E + VS16)⇔「」(U+260E + VS15)
- 「辻󠄁」(二点しんにょう U+8FBB + VS18) ⇔「辻󠄀」(一点しんにょう U+8FBB + VS17)
bの状況としては、
b-1. 意味論的にも同じだが政治的・歴史的経緯で重複して収録されているもの
例:
- 「A」(全角アルファベットのA、FULLWIDTH LATIN CAPITAL LETTER A U+FF21)⇔「A」(アルファベットのA、LATIN CAPITAL LETTER A U+0041)
- 「א」(ヘブライ文字のアレフ U+05D0)⇔「ℵ」(アレフシンボル U+2135) *1
b-2. 意味論的に異なっているため包摂されず別個に収録されているもの
例:
- 「西」 (WEST U+897F) ⇔「⻄」(CJK RADICAL WEST TWO U+2EC4)
さて、ツイートしたのは、b-2 の状況である。CJK Radicalsとは「部首」を表す文字のことで、意味論的には単一の部首のみで構成されるCJK Ideographとは区別される。
これの何が恐ろしかったかというと、現実に (とあるインターネットサービス上で) ユーザーが住所の一部に入力した文字としてこのCJK Radicalsが出現し、CP932に変換できないという事案が発生したからだ。
JISX0208とJISX0213で例示字形が異なることからWindowsのバージョン間でもフォントの差異があり、しばしばやり玉に上げられる「辻」などでも、最近のOS標準のIMEがIVSにも対応していることから、同様の問題が起こりそうな予感がする。やれやれ。
*1 両者が意味論的に等価かどうか、というのは議論の余地がある、たとえば「R」と「ℝ」は文脈の区別をしたいからこそ字形が異なっているわけなので。しかし、ここではdecomposed formがあるかないかを基準とすることにした。